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無く乗船者全員に等しく訳せられる。このことが一蓮托生的な連帯感を産みだし、その結果、学生は身勝手な行動を慎む感覚を身につける。
2-2. 基本的な生活習慣の体得
船内では、各種当直業務や授業の他、清掃、食事の準備、後かたづけ等のノルマが学生に対して厳格に課せられるこのような作業は、日頃他人まかせで暮らしている学生にとって、苦痛であるようにも見受けられるが、自分達がやらなければ他の誰もやってはくれないという厳しい現実から、作業を逃れることをあきらめ、手際よく確実に作業を遂行することを学ぶ。
また、砂の精度で放送される作業開始のアラームにより、時間の大切さも体得する。
2-3. リーダーシップの実践
船内における各種業務は、グループ単位で実施される一人員の確認や業務の確実な遂行等はグループリーダーを通してチェックされるため、リーダーとなったものは集団をコントロールする能力を自然に身につけることになる。以上、述べた事柄は、練習船教育の特色として従来から言われてきたことであり、いわゆるシーマンシップ教育の一部である。
3. システム工学教育次に、練習船を船乗り養成用の設備としてだけでなく、システムとしてとらえた場合、造船学や一般工学とどのようにかかわっているかについて述べる。
3-1. 造船学との接点
本船は、旧若潮丸に比べて長さと幅において25%程度大きくなったため、バウスラスタ、スターンスラスタ等の装備が計画された操船者というユーザーの立場から、オートパイロット、ジョイスティック等の設計、開発、提案を実施するため、定量的な操船特性の把握が必要となり、各種模型試験を実施することにした。これらの実験は、造船学における船舶操縦性の分野と考えられるが、経験や勘だけにたよらず、理論に基づく海技を創造できる操船者を育成するため、航海コースの卒業研究やコース全学生に毎週実施される実験実習として実施している。
(1)操縦性能試験
模型実験による正確な操縦性能モデルと実船の双方を保有していることは、造船者と操船者両方に有用な情報を提供することができる。また練習船の潜在能力を高めることにもなる。そのため、本校独自に操縦性能CMT模型試験を実施した。Photo-2に実験を示す。この実験は、卒業研究として、東京商船大学運動性能水槽において実施した。

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Photo-2 Maneuverability test

(2)舵単独試験4)、プロペラ単独試験
船型の大型化に伴い、本船にはシリング舵の装備が計画された。シリング舵は、普通舵と比較して舵力特性が大きく異なるが、情報不足から操船者にとって不安要因となっていた。そこでシリング舵と旧若潮丸で用いられていた普通舵との流体力特性の比較を行うため、舵単独試験を実施した。また、プロペラ単独試験も実施した。Photo-3に舵単独試験、Photo-4にプロペラ単独試験を示す。

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Photo-3 Sclling rudder open test

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Photo-4 Propeller open test

(3)風圧力試験4)
離着岸操船や錨泊時等、船の行き脚がほとんど無い場合における、風潮流等の外力の影響を正しく把握するこ

 

 

 

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